パン屋さんの品質・安全性・美味しいパンかを売り場から見分ける方法

グルメ

今やパンはご飯に続く第2の主食と言われる程、幅広い層に好まれる食となりつつあります。
ひと昔前に比べるとベーカリーの質・消費者の求める味・拘りも非常に高くなりました。
日常的に食するモノですから消費者としては当然美味しいパンをいただきたいモノですよね。
そのような消費者の思いに応えるべく、世間のパン屋各店は生き残りの為に商品開発や販売戦略の徹底に日々試行錯誤しています。
私自身も以前、大手製パン会社のインストベーカリーや個人店などで製造管理業務をしておりました。
店舗では運営側として、また店外では時にお客様目線で他店偵察などを行なってきたのですが、そんな中、自ずと気づくようになった事があります。それはパンに対する「意識」「拘り」「姿勢」など、大切な事がどこまで考えられているのか。そういった事が、売場から色々と見えくるという事。また、そこからそのお店が、ちゃんとした良い品質のパン・美味しいパンを提供出来ているのかなども想像が付くというようになったという事。
そんな経験から、ここではパンを買わずとも品質・安全性等を売り場から見分ける方法をお伝えしようと思います。
このパン屋さん「パン自体は嫌いじゃないんだけとお店の雰囲気が…」とか「衛生面大丈夫?」などと気にされている方には是非ご覧いただきたいと思います。
店舗のオモテとウラの違いは多かれ少なかれあります。ですが、そういった事も結局はオモテの売り場に見えてくるモノです。
どんな事を気にして見れば良いかまとめてみました。

1.プライスやPOPなどの扱いに気を使えているか。

お店に入って、まず気にするべき事は、販促物の状態です。
具体的にはプライス・POP・ディスプレイなどの装飾物などが、ちゃんと整えられているかどうか。
プライスが商品と同じ位置に並んでいない、床に落ちている。POPの向きが悪い、斜めになっている。装飾物がパンに直接触れている、使い終わったモノがレジカウンターの角に置きっ放しになっているなど、基本的な注意点ばかりなのですが、こういった小さな事にこそ意識して売り場を作れるかどうかは、パン製造に対する意識の現れでもあります。
お客さんからすれば「当たり前」の事なのですが、一日中売り場にいるスタッフは見慣れた景色に意識が弱くなったり、レジの忙しさに気づけなくなる事も多々あるものなのです。そんな時こそ管理者の指導が大切になってくるのです。日々、売り場作りへの意識指導が出来ているパン屋さんは、製造面でもシッカリとした拘りを持っていると判断できます。

2.他販売業以上に大切な商品陳列への意識で解る事。

1の「プライスやPOPなどの扱いに気を使えているか。」と繋がる事なのですが、拘りをシッカリ持っているパン屋さんなら、お客様に最適な状態で食べて頂きたいと考えるのは当然の事ですよね。その為には「まず美味しそうと思える売り場づくりが大切」なのです。売り場の陳列を綺麗にし美味しそうに見えるようにする。焼きたてのパンは前に置くのは当然ですが、売り場トレー内の歯抜け状態のパンを再整列し見栄えを良くする。ストックされているパンがあれば、出来る限り売り場に出す事。変化する売り場を見栄えよく維持するには、常に気配りが必要なのです。特にお昼時や混雑時の後は必ず変化があり修正するべき所が現れるものです。レジ混雑直後に直ぐに売り場を見回っているようなパン屋さんは自分達の商品に自信と誇りを持っている良いパン屋さんだと思います。逆に混雑直後直ぐに「疲れた~」といったようにノンビリ寛いでしまうような店はその程度のパンしか提供していない可能性が高いと思います。極端な言い方をすれば、パンは作品であり売場はその展示場なのです。お客様に上手に見せる事が意識出来ているかどうかは作品への拘り意識と繋がっているのです。

3.レジスタッフ同士のコミニュケーションから見える事。

パン屋さんのレジ周りは、お客さんから全て見渡せるようなところがほとんどだと思います。それだけにスタッフの行動が隅々まで見えてしまいます。勿論会話も聞こえます。
他の販売業も同じ事が言えますが、自分達の声は常に聞かれているという意識が必要という事です。不平不満は勿論、指導の時の言葉もそうです。パンの品質と関係ないのでは?と思うかもしれませんが、ここで大切なのは「配慮」なのです。良いパンを仕上げるには、厨房側の「コミニュニケーション」「集中力」「チームワーク」など色々な事への意識が大切であって、それらは厨房とレジを行き来する販売員にも伝わります。製造スタッフの意識が低ければ売場スタッフも同じような意識になってしまうのです。
そういった意識が売場で出来なければお客様への配慮も当然出来ません。
レジではお喋りや雑談をしてはいけないという事ではありません。
スタッフ同士が業務に有効なコミニュケーションをとり、時にリラックスできるようなコミニュケーションも取れているかが大切なのです。お客様にとって不快ではない会話になっているかどうかを理解しているか。当たり前の事なのですが、あえてレジから離れて耳を向けているとその当たり前の事が出来ていないお店を多々見かけます。それは厨房内でも同じような事会話があるという現れです。良いパンを作るのには結構集中力がいるものです。

4.売り場から見える厨房内の雰囲気が意味する事。

稀に厨房内でスタッフ間での言い争いや罵声の起こっている光景を見かける事があります。この事については解説するまでもありませんが、それ以外にコミュニケーションの全くみられなくチームワークを感じられない雰囲気のお店も時々見受けられます。
実際、作る事に集中していると会話をしていられる状態では無いというのも事実なのですが、それでも良いチームは暗黙のコミニュケーションが出来ているものなのです。
製パン業にた携わった事が無いと中々わかりにくい事ですが、例えばチームプレーのスポーツであれば仲間の行動を予測して自分が動き、仲間もまた予測して次の行動に移しますよね。それと同じように一つの事の連携がスムーズに出来ているのです。それが出来ているかどうかは売場からでもよくわかるのです。スタッフの動きと表情で。
この判断がつくと、この店では「良いパンが作られているなぁ」というのが見分けやすくなります。

5.シンプルなパンにこそ拘る意識で解る事。

皆さんは、スクラッチ生地と冷凍生地を食べて判断できますか?あるいは食べずとも見分けられますか?
私は初めて入るパン屋さんでは、シンプル生地のバターロールやクロワッサンあるいはハード系のパンを買うようにいます。パン好きの人には理由は解る事でしょう。シンプルなパンは誤魔化しはききません。粉・水・酵母・塩などに拘り、予定通りの仕込みで最適な状態で仕上げてこそ、限られた素材を最大限に活かせるのです。その他のリッチなパンや惣菜・加工パンなどは、それが出来てこその物なのです。にも関わらず単純生産だからといって冷凍生地で済ませるパン屋さんがよくあります。その店舗の事情や効率化により冷凍生地を使わざる得ない所もあるのですが、消費者からすれば、それは単なる店側の事情。美味しいパンを求める私達としてはそこに拘れないパン屋さんはその他のパンもその程度の意識で作っていると判断するまでです。
今回は売り場から品質等を判断する事をテーマとして書いていますが、食べて判断する場合も基準の一つとして知っておくと良いでしょう。

<説明>
※冷凍生地とは、専門業者が開発した出来合いの生地を冷凍成形したモノ。インストベーカリーやチェーン店などでは多用されている。製造の効率化が何よりものメリットだが、仕入れ値は当然、材料単体よりは高く付く。また味や食感も手作りより劣るのがデメリットとなる。(パンのクラム(中身)がパサパサしているか、しっとり感が少ないかどうかで判断しやすいです。)
※スクラッチ生地とは、冷凍生地とは違いそのお店自体で粉やその他素材の全てを軽量し、オリジナルの配合で仕込んだモノ。手間はかかるが、原価が抑えられる事と質の良い生地及び他には無いオリジナルの生地としてアピールできる事がメリットとなる。

6.夕方以降の割引タイムセールがもたらす影響とは。

夕方になるとパンの割引セールを始め、お客さんが群がっている光景を見た事はありますか?
その時間帯を狙って買いに行く事ありますか?
好きなパンが半額とかになるっていいですよね。そりゃ、その時間帯に買いに行きたいと思うのは当然です。お客さんとしては間違ってはいません。ですが、それはお店側の誤った販売方法なのです。
なぜなら
「売れ余ったから」→「割引をする」→「お客さんが喜んでその時間に集まってくる」→「定着化してしまい割引を考慮した製造をするようになっていく」→「本来の適正価格での販売は困難になる」→「スタッフの労力が過剰になり人件費もかかる」→「作るだけが精一杯で品質が落ちる」…
といったような悪循環そして最悪の場合は品質は勿論、運営難にも陥る事があるのです。
個人パン屋さんでこれをやっている場合は特に危険な傾向です。

お客さんにとって売場からは割引の価格しかわかりません。ですが単純に考えても「作り過ぎでロス削減」の対策というのは明らか。想像する通りなのですが、更にその先には大きな落とし穴があるのです。
「あのお店のパン、最近美味しく無いんだよな」と感じたらこのような経緯があったかどうか思い出してみてください。品質低下の全てが当てはまるわけではありませんが、「夕方タイムセール割引」が良いという事はありません。本当に売れ残りの数十個程度なら売上調整としてありですが、山盛りのパンを必死に売り込もうとしているようなパン屋さんは要注意ですよ。まぁ、そういう店は既に質の悪いパンが沢山並んでいると思いますが。
本当に質の良いパンを出しているお店はその日の売れるパンの数を計画的に計算し製造すると共に、自信を持って作った自分のパンをそう簡単に叩き売りしたりはしません。
それがプライドと拘りの現れなのです。

まとめ

パンの種類もパン屋さんのスタイルも多様化している今、メディアにも多く取り上げられるそんな時代です。しかし、話題になっていたはずのパン屋さんが数年後には閉店していたなんて事はよくある事です。最初は「美味しい」と評判だったはずなのに今じゃ「不味くなった…」とか「お客さんが全然入って無い…」だとか。
開店から閉店までには何らかの要因があり、その経過では必ずパンの品質や味に変化をもたらします。私達はその店の経営まで気にする必要はありません。求める事は美味しいパン、安全品質のパンを提供してもらえればいいのです。ですが、厳しい状況のパン屋さんでは自分達の利益を優先してしまうが為に、そこに拘りは既にありません。もっと言えば衛生面だって二の次にしている事もあるのです。
安全なもの・美味しいものをいただくには、私達自身がある程度自己判断力も知っておくべきだと思います。
今回、お伝えした事が今後パンを購入する前、あるいはその後の判断材料となればと思います。
味や世間情報だけで「良いパン屋」と判断するのではなく、自身の目で見極められる思考を持ちましょう。
パン屋さんの売場には本質的な情報が沢山あふれています。
パンが好きだからこそ、こういった事への意識を強める事は大切だと思います。
次回パン屋さんに出向く時は思い出してみて下さい。

 

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